法住寺虚空蔵堂の中にこのお厨子があり。中に虚空蔵菩薩を安置する。虚空蔵菩薩は、虚空(大空)がすべてのものを含むように、無量の福徳智慧を人人に与える仏様とされる。おそらくは独鈷山(とっこざん)信仰が、この虚空蔵堂の本源となったのではないかと考えられている。
その虚空蔵菩薩を安置する厨子は、正しくは「方一間入母屋造り」といい、「禅宗様」独特の方式でつくってある。大法寺の厨子と同様に、大へん精巧にできていて、ほんものの建築の模型かと思うばかりである。太田博太郎博士の説によると、「このようなほんとうの建築と同じような姿をした厨子は、鎌倉時代の後半からはじまったものだが、建物の中にあるので傷みが少なく、建築の勉強にはよい対象となる。この厨子なども軒の曲線が、中心から大きく円を描いて反り上っていることから、室町時代のものということがわかる」といわれる。
そういえば、大法寺の厨子の軒の曲線は、全体にもう少し強い”反り”を画いているが、いずれも室町時代の特徴をよくあらわしている。
なおこの厨子の「木鼻」は2つ先の写真でみるように、「禅宗様」の特色あるもので、白線にしてあるところは”巻き”といってこのかたちで、大体の年代を推定することもできるのである。写真は虚空蔵菩薩。 |