トップ
地区名索引
キーワード検索



 解説前山寺(ぜんさんじ)組物

塩田平およびその周辺には古建築が多い。
一つの地域に、これだけのすぐれた古建築が残っているところは、奈良・京都などを除けば、全国的に稀だといわれる。
しかも、純粋な「和様」あり「禅宗様」があり、また「和様」に「禅宗様」の入ったものもある。時代からいっても、県下最古といわれる鎌倉初期のものから室町末に至るものまで、まず中世建築の代表的なものがそろっている。
まさに古建築の宝庫といって過言ではない。
そこで研究や見学のためにたくさんの人がやってくるわけだが、一応建築についての基礎知識をもっていると、これらの貴重な文化財を見て歩いても、興味また一しおというところであろう。
古建築にはいろいろな見所があるが、建物にとって一番大切なものの一つに「組物」がある。「組物」というのは、柱の上部にある複雑な木組みのことで、屋根を張り出すためには、なくてはならないものだ。これがあるために塔の屋根は、思いきって、外へ張り出すことができるのである。
しかも見上げたところにあるこの組物は、建築自身に一層の重厚とか華麗とかいう性格を与える。つまり組物は、構造上なくてはならぬものであるばかりでなく、大きな芸術的な役割も果しているわけだ。
ここで簡単にこの「組物」の基礎知識を説明しておこう。
「組物」は、屋根を出すためのものだから、まず柱の上にあることが原則である。そのとき、屋根の出が短くてもよい場合は、柱の上に「肘木」を一つ横において、その上に「垂木」ののる材をうける。この場合肘木は舟のような形をしているので「舟肘木(ふなひじき)」という。(二つ先の写真第1図)
次に屋根をもう少し長く出そうとするときは、「垂木」を二重にかける。そうすると屋根の重さが増すから単純な舟肘木では支えられない、そこで「舟肘木」の上面、重さをうける場所に、「斗(ます)」という四角なところを三つつくり出して、横材をうける。これを「三斗(みつと)」の肘木といい、柱のてっぺんに「大斗」という、大きい「斗」をつくってその上におく。これが「平三斗」である。(第2図)
屋根をさらに出す場合は、この「平三斗」の上に直角にもう一つの「三斗」の肘木をくみ合わせるたると、そこに腕が一本外側へ出たような形になり、垂木をうけるところがそれだけ外へいく。これが「出組=一手先」だ。(第3図)
ところがもっと屋根を出すことが必要とされることになると、腕をさらにもう一つ外へ出せばよい。そのため、「出組」の外側に出ている「斗」の上に、もう一つ肘木をのせて送り出す。その送り出した肘木の先の「斗」に横材をのせれば、それだけ屋根が外に出る。腕が二本出ているかたちになるので、これを「二手先」という。(第4図)
さらに屋根を外へはり出すような建築になると、この腕をもう一つよけいにする。それには、建築の内部から斜め下方につき出している「尾垂木」という材(尾のようにみえるので、この名がついた)の先の方に、「三斗」をのせて横材をうければ、はるかに屋根を張り出すことができる。これが「三手先」(第5図)である。
要するに外へつき出した腕の数によって、「平三斗」とか「二手先」とか「三手先」とかいうわけだ。実際のものをよくみると、その見分け方はそう困難ではない。
前山寺のこの塔は、一層・二層・三層とも「三手先」によって構築されている。国分寺の塔も同じである。
大法寺の塔は初重が「二手先」、二層・三層は「三手先」。安楽寺の塔は、第一層の裳階(ひさし)は、「平三斗」、二層・三層は「三手先」となっている。−などということがわかってくれば、大出来である。(ここに載せた図は『日本の建築第二巻古代・中世』から、御礼申上げる次第である。)
 
撮影日:
地区/自治会: 15西塩田/東前山
シリーズ: 塩田平の文化と歴史 4解説
登録されているキーワード: 史跡 観光 教育 神社
 
Hint - 写真をクリックすると大きな画像が表示されます

[戻る]


[トップ] [地区名で検索] [キーワード検索]



© Ueda City Multimedia Information Center All Rights Reserved.