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 解説前山寺(ぜんさんじ)三重塔(重要文化財)

前山寺三重塔を西北の方向から撮った全景。大法寺や国分寺の三重塔と同しく方三間の塔である。方三間というのは、柱と柱の間が、東西南北ともに三つずつあるということで、言いかえれば、周囲が12本の柱によって構成され、底面は正方形になっている建物という意味である。
屋根は柿葺といって柿(桧・椹などをうすく割った板)の薄板で、ふいてある。相輪については大法寺の塔のところで詳しく説明してあるが、ただ「水煙」のかたちが、四角のわくの中に入っているのはめずらしい。(長野県では、新海神社=南佐久郡臼田町=にその例がある)
建築様式は古代からわが国に伝えられた「和様」に、新らしく宋から伝来した「禅宗様」を若干とり入れたもので、わが国の建築に画期的な変化と新鮮味を与えたものとされる。
それは、一体どこを指すのか。この前山寺の三重塔によって勉強してみよう。
まず、第一層をみる。この層には縁があり勾欄(手すり)がある。そしてその下は四方に竪板がはってあって中は見えないが、全体として基壇(塔の立つ基礎の壇)の形をしている。このように、縁があるのは「和様」のやり方である。
ところが扉をみると、縦横に棧が入っている。これは「棧唐戸」といって「禅宗様」の扉だ。(安楽寺の項参照)
また柱と柱をつなぐ横材をみると、柱の上方と下方の横材は、柱の上からうちつけて横に通してある。「長押」といって「和様」のものだ。ところが柱の中程(人間の腰のあたり)の横材は、上からうちつけたものではなく、柱に穴をあけて、横に通してある。これは「貫」といって「禅宗様」のものである。
なお柱の上部に、横にとび出した彫刻がある。これは「木鼻」といい、「和様」にはない。つまり「禅宗様」だけのものなのである。
まだいろいろあるが、ともかくこの塔は、このように、和様式と、禅宗様式がまじり合っていることが、はっきりとわかる塔だ。
長野県で古建築といわれているものは数多いが、大ていは、「和様」に「禅宗様」をまじえている。したがって、建築史的にいうと、南北朝から室町時代へかけて造営されたものが最も多いということになる。
この塔は、初層の塔の幅と、第三層の塔の幅と比べてみると、100対81ぐらいの割合となる。これは普通室町時代初期の率とされる。その他、いろいろの手法から勘案して、この塔の造立は、室町時代の初期−すなわち南北朝ごろと推定されている。
 
撮影日:
地区/自治会: 15西塩田/東前山
シリーズ: 塩田平の文化と歴史 4解説
登録されているキーワード: 神社 史跡 観光 
 
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