最近、高層ビルも建設され、急速に変わりつつある本町の一角に、まるで時間が止まったように静かに建っている洋館があります。
「主人の父が、昭和元年に建てたものだと聞いています。父は長門町の生まれで、医者になって上田へ出てきたそうですが、ほうぼうの病院を見てあるいていたせいか建築にも詳しく、自分でいろいろと注文を付けて建てさせたようです。その父と、わたしの主人とが二代にわたり、昭和55年までここで眼科医を営んでいました」と、ここに住む松山留利子さんは語ります。
飾りの模様が付き、一部は彩色も施された外壁や、戦時中の供出を免れた金属張りの屋根をもつ出窓など、当時のままの姿を残しています。
「わたしが嫁いでここにきたのは昭和の22〜23年。とても目立つ建物でした」
現在、二階の窓は、サッシにしてしまいましたが、以前はひもで上げ下げする方式で、とても気に入っていっていたとか。
「わたしは木がとても好きです。木造で、ていねいな作りのこの建物を、これからも大切にしていきたいですね」と、松山さんは愛着を込めて語ってくれました。 |