心込め醸す芳醇な“味”
寒い冬場は、酒造りの最盛期。下塩尻の沓掛酒造でも目下、新酒の仕込みに熱が入っています。ひときわ緊張した様子で作業に励むのは、北アルプスのふもと小谷村から毎年蔵入りする、杜氏の山崎充さん。「カンの多い仕事だけど、いちばんは基本に徹することだねェ」と酒造りを淡々と語ります。杜氏とは、酒造りをする職人の長のことです。
酒造りには、吟味された米、良質の水、そして蔵びとたちの技と経験が欠かせません。蒸した米から麹や酒母(酵母を培養する)などをつくり、これらと水を混ぜ合わせて醪に。この醪を約15度で20〜25日間寝かせたものが日本酒のもととなります。「最も大事なことは、いい『蒸かし』を出すということ」と目を輝かせる山崎さん。なおも手を休めず機敏に、蔵の指揮をとり続けます。
プーンと、日本酒の甘い香りが立ち込める酒蔵。「みんなで心を一つにすれば必ずいい酒ができる」が信条の山崎さん。仕込まれた酒の中には、心から酒を愛する蔵びとたちの、汗と真心の結晶が今も生きています。 |