上田丸子電鉄丸子線の終点としてにぎわった上田東駅は、昭和44年に廃止されるまで上田の東の玄関口でした。現在は駐車場になっている、上田東駅跡地の程近くに、この洋館は建っています。
「東京新宿の松平写真館で写真の修行をしたわたしの父が、昭和4年〜5年頃に建てたそうです。ツガ材の通し柱を用い、普通の民家2軒分くらいの費用をかけて建設したもので、当時としては斬新な建物だったようです。以来父は、昭和56年までここで写真館を営んでいました」と語るのは小林眞夫さん(北天神町)。
写真の器材は最先端のものをそろえ、2階のスタジオは20〜30人の集合写真を撮れる広さがありました。
「父がこのような建物を建てた理由はよくわかりませんが、修行をしていた松平写真館というのは、当時、東京では一流の写真館で、慶応大学などにも出入りしていたそうです。おそらく数多くのモダンな建物を見て、自分でも作ってやろうと思ったのでしょう」
ところで『ゼニヤ』という店の名前は、長門に住んでいた小林さんの祖先が、諏訪高島藩の城主に多額の寄付をしてもらった屋号『銭屋』から付けたそうです。
三角形に張り出した、小さな飾り屋根を持つこの洋館は『写真館』いう言葉がよく似合います。 |