千曲河畔の半過は交通の難所でありました。県道上田稲荷山線が開通したのは昭和八年でしたが、それまでは千曲川沿いの道を避け、集落の中を通行することが多く、明治四十二年には半過トンネルが完成しています。
このトンネルは今も残っていますが、通行はできなくなっています。大正十年にこのトンネルから千曲川を望む写真が日本百景(読売新聞社主催)に入選、全国に半過の地が知られるようになりました。
その後、日本百景入選を記念して岩鼻の上に千曲公園が開設されました。標高五三八メートル、敷地面積二・二ヘクタールの公園には、サクラの木々などが植えられ、上田市内を流れ北信地方へと蛇行する美しい千曲川が眺望できます。
この千曲公園のある岩鼻には、県指定天然記念物のモイワナズナが生育しています。アブラナ科の多年草で、五、六月ごろ、小さな白い花が咲きます。
モイワナズナは北海道の藻岩山で発見された寒帯の植物ですがなぜか、半過の岩鼻に生育しており植物分布のうえでたいへん珍しいとされております。 |